Megumi Shauna Arai

Sinew

11/22 – 12/27/2025

Hours: Wednesday – Saturday 12:00-19:00
(日月火祝 休廊)

Closed: Sun – Tues



このたび KOKI ARTS では、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、新井慈シャナによる日本初個展「Sinew」を開催いたします。本展では、これまで「強さ」や「しなやかさ」として語られてきたものを、異なる視点から捉え直す新作をご紹介します。展覧会タイトルの「Sinew」は、筋肉と骨の間にあって身体の動きを支える組織、縫い合わせたり結びつけたりする丈夫な糸、そして「力そのもの」を意味する言葉です。

「Sinew」は新井の表現活動における新たな節目であり、予想外の体験と、意図して設けられた条件や手順の双方から生まれています。こうした二つの側面が重なり合うことで、これまでの作品には見られなかった素材やスケールが導き出されました。今回の新作は、続けて参加した海外レジデンスでの制作を経て生まれたもので、いずれも小ぶりなサイズで、鑑賞者にじっくりと近づいて見ることを促します。​絹を張った布はそれぞれ、多層的に色を重ねたにじみや、オーゼティック(膨張)構造から発想を得た模様によって独自の世界をつくり出しています。新井は近年、気功(特に腱の流れを整える型)の実践に深く取り組んでおり、そのゆっくりとした、意識的で、積み重ねるような動きへの親和性が増しています。こうした感覚は制作過程にも反映されており、一つの作品が完成するまでに、布を張る、描く、乾かす、洗うといった10を超える工程が丁寧に繰り返されています。見えづらい工程であっても、すべてに同じ注意が払われています。

新井は、「sinew(腱)」という言葉が持つ複数の意味や、その控えめな存在感に関心を寄せています。筋肉や骨といった強さの象徴に隠れがちですが、実は「sinew」こそが「強さ」を最も直接的に表す言葉です。本展の作品は、鑑賞者に、ふだん見過ごしているものに目を向けるよう静かに促します。小さく繊細な作品や宝石のような色合いは、そこに込められた手間や素材、時間の層をそっと覆い隠し、静かに表へと現れる瞬間を待っています。Sinewは、強さでありしなやかさでもあります。そして、本展「Sinew」は、たどり着くことであり、再び戻ることでもあります。

— クレア・キム

新井慈シャナ(1989年生まれ)は、ニューヨークを拠点に活動。​彼女の関心は、出会いの場、身体化の実践、折り畳む/広げるという美学、そして物質と非物質の相互関係など、多岐にわたる。CUNY(ニューヨーク市立大学)にて学士号を取得。2025年秋には千葉の COMMONS / OPPES にてアーティスト・イン・レジデンスに参加。CUNY(ニューヨーク市立大学)にて学士号を取得。2025年秋には、千葉の COMMONS / OPPES にてアーティスト・イン・レジデンスに参加。近年の主な展覧会に、「Immanent Infinite」(Object & Thing、ニューヨーク、2025年)、「Group Shop」(Bridget Donahue Gallery、ニューヨーク、2024年)、「A Summer Arrangement: Object & Thing at LongHouse」(イーストハンプトン、ニューヨーク州、2023年)、「Object & Thing at Madoo」(サガポナック、ニューヨーク州、2022年)、「At The Noyes House: Blum & Poe, Mendes Wood DM and Object & Thing」(ニューカナン、コネチカット州、2020年)、「Lore: Reimagined」(ウィング・ルーク博物館、シアトル、2018年)、「Midst」(Jacob Lawrence Gallery、シアトル、2018年)など。近年のレジデンスには、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館、ヘッドランズ・センター・フォー・ジ・アーツ、ロウアー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシルなどがある。作品は Topical Cream、Architectural Digest、ニューヨーク・タイムズ、Artnet などで取り上げられており、今後 The Here and There Collective にて紹介予定。

クレア・キムは、ニューヨークを拠点とするキュレーター/ライター。現在、Asia Art Archive in America にてプログラム、コレクション、エキシビションのディレクターを務めるほか、The Here and There Collective のキュラトリアル・アフェアーズ・ディレクターを兼任。以前は BRIC(ブルックリン)にて代表特別補佐、2020–21年には NXTHVN(ニューヘイブン、コネチカット州)のキュラトリアル・フェローを務める。これまで ニュー・ミュージアム、グッゲンハイム美術館、CUE Art Foundation、Asian American Arts Alliance など、複数のアート機関においてミュージアム・エデュケーションおよびプログラムに携わる。James Cohan Gallery(ニューヨーク)、ヘッセル美術館(CCSバード、ニューヨーク州)、Elizabeth Foundation for the Arts(ニューヨーク)、Museum of Contemporary African Diasporan Art(ブルックリン)、BRIC(ブルックリン)などで展覧会を企画。 バード大学 Center for Curatorial Studies にて MA 取得。